『ヒミズ』を観てきました。:今日も元気にカルト映画館~第122回

園子温 x 染谷将太 x 古谷実




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<2012.1.14 TOHOシネマズ 船橋ららぽーとにて鑑賞。>
あらすじなどはシネマトゥデイより
チェック:『恋の罪』などの鬼才園子温が監督を務め、古谷実原作の人気漫画を映画化した衝撃作。ごく平凡な15歳の少年と少女の運命が、ある事件をきっかけに激変する過程を園監督ならではの手法で描き出す。主人公に『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の染谷将太、ヒロインに『劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ』の二階堂ふみら若手実力派を起用。自身も原作のファンだという園監督が創造する新たなる人間の心の闇から目が離せない。

ストーリー:どこにでもいる中学3年生の祐一(染谷将太)の夢は、成長してごく当たり前のまっとうな大人になること。一方、同い年の景子(二階堂ふみ)の夢は、自分が愛する人と支え合いながら人生を歩んでいくことだった。しかしある日、2人の人生を狂わせる大事件が起き……。



ここをよくお越しのみなさんならご存知だと思いますが、私は中二病なくらい園子温監督の大ファンです。
その園監督の最新作で。
そして、昨年も好きな俳優に挙げさせていただいた染谷将太主演。
そしてそして、私が好きな漫画家さんの1人古谷実の原作という。

園X染谷X古谷の組み合わせ!
これはもう公開日初日、初回に観に行くしかないっしょ!!!!ということで、14日・・・TOHOの日でTOHOシネマズでは\1,000で観れるというラッキーもありネット予約でばっちり希望の席を押さえてから久しぶりの船橋のTOHOシネマズへ!(市川コルトンでは上映なしのため・・・)

古谷実って、多くの人と同様に「稲中卓球部」で知った口なんですけれど、それ(っていうか正確には「グリーンヒル」)以後の陰のある作風に変わっていったあたりからは特に好きで『シガテラ』、『わにとかげきす』、『ヒメアノ~ル』なんかもコミックス持ってますし、当然『ヒミズ』も全巻持ってるわけです。
原作では本当に急に終る展開なのですが、古谷実のシリアス路線の漫画って恐らく編集部命令ではなく古谷実自身が突然打ち切ったような終わり方をする漫画が多いんですよね。

そのラストはどうなるのか?
いつもは「原作は原作、映画は映画」と言い続けてる私ですが、この作品に関しては原作厨でもあるのでその視点でも感想を語りたいと思います。
ああ、ちなみに原作を知ってる人は原作と映画を比べるのもしょうがないともいつも言っています。原作未見の映画をわざわざ映画を見る前に原作を見て臨んだり、後々原作を見てまで映画の方を否定する側に回るのはおかしいねってだけのことです。


さて、そんなわけで楽しみにして観てきました。

確かに原作に沿ってるところ、そうでないところとあり。
一番心配していたのは3.11の東日本大震災の後で大幅に書き直したと言われる脚本。
もちろん、東日本の復興を祈る気持ちは日本人として当たり前だし、みなさんもそうだと思います。
しかし、”震災”を踏まえての脚本変更というとどうも説教臭くなるんじゃねえか?という予感がしてならなかったのですよ。
『ヒミズ』って原作はヒミズという動物をそのままタイトルに用いたもので、その陽を見ないモグラ科のイメージそのまんまの人間模様を綴ってる作品なわけですよ。人間の心の闇というか。
主人公の住田くんの育った環境は劣悪でけして誰もが当てはめられるような境遇ではないにしろ、どこかの落とし穴に嵌ってしまうと住田のようなどこか死んだ心の持ち主になってしまうようなこともあるわけで。
この『ヒミズ』以降の多くの古谷実の漫画はこのような闇を描いてるような漫画が多くて大好きなんですね。

と、漫画の話に流れてしまうのでこの辺にしておきますがそこが心配の種ではありました。

確かにオープニングは震災の被災地の瓦礫の山・・・周囲の建造物は何もないところでうろたえたり、無気力で彷徨う登場人物のイメージ映像で明けます。そして、劇中幾度となく震災が言葉であったり背景に出てくることが多く嫌でも特に日本人ならこの設定に震災を背景として思い浮かべることができたのではないでしょうか。
この舞台は茨城県(土浦?)と思われますが、茨城も大変な被害にあった地域ではありますが、住田の住んでいるあたりでは建造物などに震災の影響が明確に出ていたわけではないのはわかるようなところです。
舞台は茨城とは一言も劇中で言われてませんし、そんなことからもわかるように一応、劇中では被災地の物語ではないわけです。

さて、その設定で震災を踏まえて園監督がどのような映画を作りたかったのか・・・。
これから原作漫画を読む人もいるかもしれませんので、原作漫画の結末はここでは申しませんが、原作の終わり方とは違います。原作では古谷実の現在地特有の憂いの結末が待っているのですが、映画の方では具体的なラストは申せませんが前向きになれるようなラストシーンにはなっています。

一見、「お。このまま原作みたいな終わり方になるんかいな」と思いながら観てしまいます。
夜野がおじいちゃん(渡辺哲)に当てはめられていたり、環境の設定なども違ってるところも多々あるにせよ、結構原作に忠実な作りにはなっているんですよね。
さて、原作に忠実なラストシーンを踏まえてその後にどのようなシーンが待っているのか。
まあ、大げさに書くような締め方でもないとは思いますがそれでもこのラストシーンにしたことに作り手側の大きな意図があったのかと思います。

劇中では原作にはなかった茶沢さんの家庭崩壊の様子も描いています。
原作だけでは可愛い天然系の茶沢さんがどうして住田に惚れこむのかイマイチ伝わりにくいところがありましたが、映画では親に邪魔モノ扱いされて居場所を失っている茶沢さんの様子。それも普通以上に鬼畜な親の下で生きなきゃならない辛い現実を描くことでこの住田と茶沢の距離をより一層近いものにし、2時間弱という限られた映画の尺の中で見ている客にも伝えやすかったんじゃないだろうかと思いますね。

『ヒミズ』については住田、茶沢の他にもう1人主人公と呼んでもいい人物がいまして。それが夜野なんですね。
原作では夜野は住田の同級生で見た目『未来少年コナン』のジムシィみたいな感じの奴なんですけれど、映画では渡辺哲が演じています。
最初、渡辺哲の演じる役が夜野と判らなかった序盤では原作に居た茶沢さんに住田のボート屋で性的なイタズラをするホームレスの役かと思っちゃいましたよ(笑)
年齢、環境の設定は違えど住田想いのところなどは原作に忠実で、それでもって映画の世界観ではけして無理のない立ち位置で「ああ、こういう夜野でもありなんだな」と素直に思えましたですね。

それにしても渡辺哲さんていい役者ですよね。
ほんと悪人もできるし、こういうピュアなおじいちゃんも映画の中で存在感が際立っている。
この映画を見た人ならばけして忘れない脇役だったのではないでしょうか。

役者で言えば、主演の染谷将太は言うまでもないですが、茶沢さんを演じた二階堂ふみもいい役者ですね。
すごくすごく宮崎あおいに顔が似てるんです。宮崎あおいは結構好きなので、ついついダブらせてしまいますよね。
原作既読なので茶沢さんのエロいシーンはどうなってしまうの?とドキドキしてましたが、PG12の映画でそこまでのものがあるわけないので、まあそんなシーンは映画ではなかったんですけどね(笑)
そもそも園監督の演技指導にはヌカリはないというので、監督あってこその演技でもあるのかもしれませんけれど登場人物に一切妥協がなく、特に主役級の2人はまだまだ若い役者なのでいい経験ができたのではないでしょうか。


なんか思いつくことを思いつくままただただ書いて来たら無駄に長くまとまりもなさそうに終わるので、締めに入ろうかと思います(もしかしたらいつもの様に後々追記はあるかも)。


「救いのない話」。一言で言えばそうなってしまう『ヒミズ』。これは映画も原作も基本的には同じ作りになっているのです。
恐らく未曾有の大震災を経験して、被災者をはじめ日本人の多くはとても暗い気持ちにさせられた2011年だったと思います。

そしてこの作品もロクデナシの親の下に育った中学生の男女が苦悩しながらも、逞しく自分の足で前に進もうとしている姿が描かれる。
それはけして、綺麗な形で前に進むものではないかもしれない。
それがどこかリアルな見せ方なのかなと思うわけです。震災につけてただただ「頑張れ」って言うだけなら誰でもできる。本当にどうしようもない闇の中で社会的には自分の力ではどうしようもない彼らを置くことで、必死に前を向く姿に励まされるとか綺麗なことではないんだけれども何か思うところはあるのではないでしょうか。
その何かってのは栃木・千葉の被災程度しかしていない私には軽く語れるものではないかもしれないが、だから何となくしかわからないが、そう思うのです。

けして説教臭くない映画。
それでもって、上っ面だけのメッセージではない映画。
その下にある本質を観ることが出来れば、ただの定型文のようなポーズで終わらない震災後の脚本変更の園子温という人物がどこか見えてくるような気がしてなりません。







・評価:★★★★★★★★★★
     ★★★★★★★★★☆(19) 
・公式サイト


・暴力殴打度:★★★★☆ ←※今回から新設。バイオレンス、暴力度などでもよかったけど5文字に強引に合わせた。
・理解不能度:★☆☆☆☆   
・キ●ガイ度 :★★★☆☆  
・グロゴア度 :★☆☆☆☆
・下品汚物度:★☆☆☆☆  
・おバカ様度 :★☆☆☆☆ 
・御エロ様度 :★☆☆☆☆



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  • 初の園子温作品!

    Excerpt: 20日のことですが、映画「ヒミズ」を鑑賞しました。 普通に生きることが夢の中学3年生の祐一 彼のことが好きな同じクラスの景子 この2人に起きる事件・・・ うーん 強烈! パンチの効いた作品といい.. Weblog: 笑う学生の生活 racked: 2012-01-30 12:19