今日も元気にカルト映画館~第129回『イレイザーヘッド』: ATB10(5)

これこそ真の”鬱映画”!




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あらすじなどはgooより
解説 - イレイザーヘッド

フィラデルフィアの工業地帯を舞台に、1人の青年の周囲に起こる奇怪な現象をシュールなタッチで描く。製作・監督・脚本・製作デザイン・編集・特殊効果は「エレファント・マン」のデイヴィッド・リンチで、彼が個人資金で作り、AFIが出資協力したもので、これは彼のデビュー作。撮影はフレデリック・エルムス、ハーバート・カードウェル、音楽はピーター・アイヴス、美術はジャック・フィスクが各々担当。出演はジョン・ナンス、シャーロット・スチュワート、アレン・ジョセフ、ジーン・ベイツ、ジュディス・アンナ・ロバーツ、ローレル・ニアなど。

あらすじ - イレイザーヘッド
フィラデルフィアの工業地帯。印刷屋の職工ヘンリー・スペンサー(ジョン・ナンス)は、風采のあがらないモジャモジャ頭の目だたない男だ。彼のガールフレンド、メアリー(シャーロット・スチュワート)が、ある日、思ってもみないことを告白した。彼女は、今までに見たこともないような恐しい形相をした奇形の赤ん坊を産んだというのだ。ヘンリーは、無表情でその話を聞き、メアリーとの結婚を決意した。新婚生活が始まるが、2人は、赤ん坊の異様な泣き声に悩まされる。耐えきれなくなったメアリーは、遂に家出し、残されたヘンリーは、同じアパートに住む女(ジュディス・アンナ・ロバーツ)と肉体関係を結ぶ。部屋のラジエーターの中から現われる不思議な女(ローレル・ニア)の幻。そんな中で、赤ん坊が邪魔になったヘンリーは、現実ともつかぬ世界に入りこみ、やがて奇形児をハサミで殺してしまう。へンリーの意識はますますえもいわれぬ世界に捲きこまれてゆくのだった。



みなさんもよく知るデイヴィッド・リンチの長編デビュー映画です。

これはもう本当に面白い作品だったんですが、今回4月のBlu-rayでリリース(イレイザーヘッド デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray])されたことを機に購入!
そして昨日、一気に鑑賞しましたがやっぱり面白い!!

正直なところストーリーを追おうとするとかなり難解で頭が熱暴走してしまいそうになりますが、自分の中の感覚で素直にスッと入ってこれるもんかどうかでこの映画が好きになれるか否かってところがあると思うんです。

映画は全編モノクロなのですが、主人公のヘンリーがおどおどしながら結婚を報告に嫁になるメアリーの母に会いにいくのですが、ここのあたりからこの映画の異様な世界が始まる。
食卓の場で突然発作を起こし白目になるメアリー、こんがり焼いて出てきたローストチキンは脚をばたつかせ、ヘンリーがナイフを入れるとそのチキンからどろどろと大量の血が流れ出る。
そして、突然メアリーのように発狂して彼女の母は部屋を出て行く。

この時点でもう普通じゃない。先ほど書いた発作というものも椅子に座って上半身を前後させながら「おっおっおっ」と白目剥いて病的にもがくのでハッキリ言って見ていて怖い!

そして、あらすじにも書かれてる奇形の赤ちゃん。ヘンリーの子どもなんですが、見た目は首が長くて顔が恐竜のようにとんがっている。
目は大きくひん剥かれていて明らかに異常。でも、人間の赤ちゃんのように夜泣きする。
その夜泣きにノイローゼになりメアリーは赤ちゃんとヘンリーを残して出て行ってしまうんですけどね。

すると母親に棄てられた奇形の赤ちゃんは夜泣きが激しくなったかと思えば、顔に無数の吹き出物が出て、口からは泡を噴いて体調を崩してしまう。顔は完全に俗に言うアヘ顔でヘンリーも困り果ててしまうわけですが、この時のヘンリーがちょっと微笑ましい。
加湿器を傍に置いて一応、このクリーチャーのような自分の子どもを気遣う様子などを見ると、一応父親としての自覚もあるのかなとどこか温かく見えました。私だけかもしれませんが(苦笑)

そのあたりから、難解なシーンがより一層続いてくる。
部屋の備えつきのラジエーターの中へズームしていくと舞台でまるで幼い頃に読んだ絵本のコブ取り爺さんのように両頬に大きなコブを持った歌姫がゆっくりしたステップを踏むと上から奇形の赤ちゃんの前身みたいな30cmくらいの生物?が幾つも落ちてくる。

そのようなシーンを眺めていたかと思えばヘンリーが目覚めると横には出て行ったはずの嫁が寝ている。

ここまでの不気味な映像の数々はもしかしたら夢なのか?いや、この彼女がいるこの風景が夢なのか?
どこからが現実でどこが仮想なのか映画の中でぐるぐるにかき混ぜられるとどこに落ち着いたらいいか迷わされることだろう。

そして、難解な世界が続いていくと突然ヘンリーの首が落ちるシーンがある。
首が先ほどのコブ歌姫のステージ上にボトリと床に落ちると、首の無い体からは奇形赤ちゃんの首のようなものが伸びてきて、その姿はまるでミスター・ノーのように。
その首は子どもが拾い、そのまま走って工場に持っていくと受け取った工場長が機械にかけてその頭は鉛筆の頭につく消しゴムになる(イレイザーヘッド)。
その完成品で文字を消す工場長。消し具合を確認し、そのゴムカスを集めて床に吹き飛ばすと黒いバックの風景にゴムカスが舞い散り、そこからヘンリーの頭が戻った姿で映し出される。

そこからまた傍にはあの奇形の赤ちゃんがいる。嫁はやはりもう居なかった。
夜泣きする奇形の赤ちゃん。

さて、ヘンリーは・・・・?

たぶん、この後に起こることをそのまま書きなぐっても文字だけ読んでる人にとっては「?」と思うことでしょう。
でも、これから見る人のお楽しみもあると思いますのでクライマックスについては伏せさせてもらいます。


冒頭でアパートの隣人にメアリー(嫁になる女)から電話があったことを聞き、そのあとで二つに千切れた(切りすてた?)写真を繋ぎ合わせるシーンがあるのですが、そのシーンやら赤ちゃんが出来たことを知った時のどこか煮え切らないような表情などどこか現実があるのに現実と向きあいたくないものがあるのは手に取るようにわかる。

その不安とも言うべき心情の表現されたものがこの映画なのか。
そう、シュールで衝撃的でそして難解な映像の数々を見てまず真っ先に脳裏に浮かんだ言葉は「不安」。
その不安は苦しみを生み、そして行く先に暗いものを被せていく。
1つ1つとちゃんと理解しようと思うと恐らく不可能なこの悪夢の世界には正直なところ救いというものは私には感じ取ることはできませんでした。そして、救いに繋がる「解放」を求めているんだという想い。
もがいていて、苦しい想いというものはストーリーなどは正面から伝わらせていなくてもその映画の持つ映像というものでそちらの方は観ているものに伝わらせる・・・というよりも伝染させることは出来ているように思う。そんな映画です。

俗にいう鬱映画という『レクイエム・フォー・ザ・ドリーム』、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などとは違い、この映画はもしも将来に不安を感じている人、鬱な人が見たら心の芯から侵されてしまう可能性があるようにも思います。
よく「鬱の人は見ちゃいけない絵画」とかあるじゃないですか。あれに近いものがあると思います。


考える映画ではない。感じる映画。
何かを求めて見るのではなく、私のように興味本位で観る分には面白い映画と言っていいかもしれない。

ただし、相当扱いは危険。






・暴力殴打度:★★☆☆☆
・芸術ぽい度:★★★★☆
・理解不能度:★★★★★
・キ●ガイ度: ★★★★☆  
・グロゴア度: ★★★☆☆
・下品汚物度:★★★☆☆  
・おバカ様度: ★☆☆☆☆ 
・御エロ様度: ☆☆☆☆☆







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※今回のリンクは全てBDですのでご注意。









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この記事へのコメント

ぱたた
2012年05月10日 11:54
昔リマスター版みたいのを渋谷で見たのですが
ホラーは大丈夫なのに本作のグロシーンは薄目で
まともに正視出来ませんでした。
小さい頃強引に連れられた「エレファントマン」もそうでした。。
リンチのこういう系は苦手なのかも??
かつを
2012年05月10日 13:32
何年ぶりかに改めてこの映画見ましたけれど、全編モノクロでも色々とエグイですよね(苦笑)
文中にも書いた赤ちゃんに発疹した無数の出来物が気持ち悪かったです。

気がつけば「インランド・エンパイア」「マルホランド・ドライブ」「エレファント・マン」とこのコーナーでリンチ作品は4つ目。
意識して書いてたわけじゃないけれど、やっぱり潜在的にリンチの作品が好きなんでしょう・・・。私はw

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